ベナレス:サリーハウスのジャイン
ベナレスの沐浴ガートから階段を上ってすぐ、ダシャーシュワメード通りにある「JAIN SAREE HOUSE」を訪ねたことがあった。マハーヴィーラは財産を一切所有するなと説いているけど、商売による利潤はどうするの?という質問に、店主であるスシュル・ジャイナさんは、こう答えてくれた。 「マハーヴィーラはそんなこと言ってないよ。必要な分だけ所有して、それ以上を求めるなと説いているんだ。何も持たずに暮らすなんて、不可能に決まってるじゃないか」 アヒンサーにしても同様で、自分の最大限の努力で殺生をさけるしかない。完全に実行するのは無理だ。そのためには出家するしかないよ、とスシュルさんは丁寧に説明してくれた。 「汝の義務をつくせ。それをあたうかぎり温かい思いやりをもって行え」 これが在俗ジャイナの合い言葉なのである。 「ヘイ、ジャパーニー、ドルチェインジ? マリファナ? ハッシシ?」 ここベナレスでは、日本人をカモろうという客引きのしつこさにウンザリするが、そのなかにあってスシュルさんの店は、誠実、正直、信頼と、ジャイナ商人のお手本そのものといった、涼しい商いを営んでいる。この人たちには儲けようという気持ちがあるんだろうか、とつい疑ってしまった。逆にいえば、それだけ潤っているということであろう。インドでぜひサリーを入手したいという方にはおすすめの店である。 (撮影:奈良 仁、1994) |