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おとなのシャドウ

老人や子どもに問題が生じているのは、彼らがいわゆる一人前のおとなのあり方の、影にされてしまっているからである。おとなのみが健康で完全であり、子どもはそのおとなになるための予備軍であって、老人は、おとなの役目を果たした後の廃物であるという考えから、あらゆる問題が起きている。そこで人びとは、子どもたちを早くおとなにしようとし、自分はできるだけ長くおとなでいて、老人にはなりたがらない。すべてがいわゆるおとなのあり方を標準として考えられ、それに適応するように作られている。老人と子どもは、おとなのシャドウでしかない。そこで、彼らは病理的な症状という形で、その復権を訴えているのだ。

個としての人間の生涯という観点から見ると、現実に役に立つ働きをする成人期だけが最良のものと考えられている現代は、どこか間違っているのではないだろうか。想像の世界に開かれている子ども時代や、瞑想的な老人のあり方が、もっと重要視されてもいいのではないだろうか。子どもはそこで魂を形成し、現実に適応するおとなのあり方を経て、老人はその魂の輝きの中に生きるのである。それが人間の一生であろうと思う。

ユングは、彼自身の生涯の中で、この事実を見つめ続け、あまりにも目先の現実に走るおとなたちに警鐘をならし続けた人であった。

秋山さと子『ユングの心理学  』 講談社現代新書

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