渡辺貞夫さんの教室
大谷:この時期はまだそのジャズ理論ははいってきてない...いわゆるツー・ファイブ・ワン...
山下:そんなことは渡辺貞夫さんがバークリーから持って帰ってくるまで私は知らなかった。65年に帰ってきて、66年に教室開きました。
坂本:その教室に行ったんですか?
山下:行きました。富樫雅彦とか、菊池雅章とか、みんな来てましたね。そんでノートで教えてくれるんですが、そのノートはぜんぶ英語ですよね。ですから英語のノートを先生がぜんぶ英語で言いながら、日本語で伝えていく、でも黒板に書くのはぜんぶ英語だからもう明治時代とおんなじよ(笑)。
坂本:漱石の世界だ(笑)。
山下:貞夫さんがやってたあれは明治時代だって(笑)。
坂本:でも学問を外から持ってくるって、そういうことですよね。
山下:日本語にできないんですよ、オルタード・スケールとか。なんて言います? 変...変...変化列?(笑)
坂本:簡潔で長生きする略語をつくるなんて大変だよね。
大谷:考え方自体をかみくだかないとだめですよね。
ジャズ理論は後から知った
山下:ジャズ理論ていうのは経験則だから、耳コピかなんかでやってたものが言葉で説明されるってだけでしょ? 渡辺さんもバークリーにいった途端に、いちばんうまいんですからね。実技では。じゃあキミのやってることはなんだ、っていうと、そんなふうには説明できないわけ。ツーマイナー・ファイヴセブン・ワンでバリバリにすごいフレーズ吹けるわけだけど、それは実はツーマイナー・ファイヴセブン・ワンというものであって、キミの使っている音は2度マイナーのときにこのオルタードを使い、このテンションを使い、G7のときにこんなオルタードを使っているから、そういう音になるんだよってなことを後から聞いただけの話なんだよね。でもそれは後で知ったほうがいいことでしょ。
坂本:最初に知るよかね。自分でみつけてやりだすほうがそりゃいいですよね。
山下:オレがやってことがこんなふうに説明されるのだ、っていうのは敗北感というよりもむしろ気持ちのいいことだと、とらえたいですよね。
大谷:ちょうどこの録音された前の年にハンプトン・ホーズは日本に来て...
山下:そうそう、"ウマさん"と言ってましたね。(笑)
大谷:そのころはまだモダンのほうにはいかれてない...
山下:ええ、全然知らない。あとで知ったことですね。穐吉敏子さんが習ったとか、守安祥太郎さんとか。
大谷:「モカンボ・セッション」という日本でも有名なセッションがあって、そこにハンプトン・ホーズが来てたんですけど、大麻で強制送還されて、西海岸で吹きこんだのが今のアルバムっていう(笑)。兵隊で来てたんですけど。
坂本:兵隊だったんだ。
大谷:そう、それが55年ですね。この時期からモダンジャズ花盛りというかんじですが...





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