「ベイズン・ストリート・ブルース」(ルイ・アームストロング&ヒズ・ホット・ファイブ)
坂本:もうかなり様式が確立してますね。
大谷:そうですね。1926年か27年の...
坂本:西洋音楽の部分っていうのかな、ハーモニーはやはり教会音楽ですね。讃美歌ですね。
山下:ものすごい勉強してますよね。完全にこなしてますね西洋音楽を。西洋音楽に近づこうとしているような感じがあるんだけども...
大谷:一応ブルースを名乗ってますけれども、いわゆるブルース進行ではない。
坂本:賛美歌みたいですね。アドリブもちょっとコードのテンションなんかを取り入れたり微妙にコードが移ると、その構成音を入れたりして完全なものではないですね。
山下:でもハーモニー進行にたいするメロディーの作りかたの的確さってすごいよね。西洋音楽、クラシック音楽でもある進行なんだけれども、そこにつけ加えるメロディーはやはりジャズの発明だと思いますね。
大谷:どう聴いてもアメリカ音楽っていうか、教会音楽としてはヨーロッパのものだとしても、メロディーラインはもう完全にアメリカのもの...
坂本:世界中にキリスト教の布教が行ったわけじゃない。その各地でいろんなちがう花が咲くわけね、南アフリカのものもやはり賛美歌とか教会音楽がもとになっているけど、全然ちがう開花のしかたをしている。あるいは、ポリネシアのあの辺のもすごくキリスト教化されてね、現地の音楽が宗教音楽として、変換されるんだけれども全然ちがうもの、南米でももちろんそうですけれども、そのへんが面白いですよね。日本はあまりその影響を受けてないというのも面白いですよね。まあ、唱歌なんかはそうなのかな。
山下:そうでしょうね、唱歌には賛美歌的なものが多いですよね。
坂本:いちばん唱歌に影響がでてるのかもしれないですね。
大谷:ルイ・アームストロング、またはこのあたりの音楽には山下さんは思いいれっていうのは...
山下:やっぱりこの人のメロディーの作りかたがすごく、いま聴いても的確ですよね。
坂本:山下さんは、でもこのジャズ史、時代順に聴いてきた訳ではないでしょう?
山下:だいたい時代順ですよ。
坂本:そうなの。
山下:いたずら弾きをしていた時に兄が大学生でやっていたスイング・バンドに入れてもらって、くっついて行って、弾けたんですね。「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」という曲でしたけど、CからE7に行った時の、Eの上にただのGではなくてG♯を入れた三和音ができるんだって発見したときのうれしさっていうのがありましてね、そしてギターの人にコードネームっていうものを教えてもらって、そっから先は一直線なんですよね。
坂本:その進行はリストの有名な曲と同じだよね。
山下:うんうん、愛の...なんたら(注:愛の夢)。それを言うともう、ジャズの要素はすべてクラッシックのこっからだよっていう話がでてきちゃいますよね。
坂本:ビートルズも多用するけど、そういう進行ね、CからEってのはね、すごく気持ちいいですよね。
山下:すごく気持ちいい。それから1度から6度へのあの鋭さかげんっていう、あんなものはずっと生涯つきまといますけれど(笑)、そのコードで始めたときにやはり、こういう曲を聴いていたんですよ。
大谷:最初はディキシー・スイングの音楽から...
山下:兄のバンドはね。いったとしてスイングですね、ディキシーとスイングとの中間。エディ・コンドンのマネしてたんですよ。
大谷:シカゴニアンの...
山下:そうそうエディ・コンドン・オールスターズの録音をしょっちゅう聴いて...
大谷:ジーン・クルーパですね。
山下:そう好きでね、マネをしようとして、だから本当にそのとき言ってましたよ、「昨今はモダンジャズなどという変な音楽が流行ってるそうだが、ああいうことをやるヤツはダメだ」って、お前はなるなっていうような。言われりゃあなるんだよね(笑)・
坂本:けしかけてる。
山下:けしかけてる(笑)、本当にそういうセリフが兄たちのあいだでありましたよ。
大谷:ベニー・グッドマン・トリオなどはコピーとかされてたんですか。
山下:それはね、ちょっとできなかった。チャイナ・ボーイってのが大好きで聴いてたんだけど...





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