自分自身は変化しないで化学反応を引き起こす物質の働きを「触媒作用(catalysis)」といいますが、これはギリシア語のkata(解く)とlysis(放つ)を意味するそうです。つまり「解放」のことです。音楽も人間どうしにメンタルな化学反応を起こす触媒みたいなものだと想います。音楽療法士はさしずめ触媒人(catalyst)といったところでしょうか。
「あまりの過酷な治療と孤独の連続に、しだいに考えること自体をやめて、ただ病院側の指示につき従うだけの無感情・無表情な人間になっていく」と前に書きましたが、これは長期入院者ほど顕著であるように感じます。血液内科に特徴的なのかもしれませんが、白血病患者(とくに男性)は、自分の病気のことでアタマが一杯で、自分だけの殻に閉じこもりがちです。たいていカーテンを終日閉め切りにし、相部屋の患者とのコミュニケーションをあまり好みません。付き添いの奥さんが来れば急に多弁になりますが、ふだんは貝のように閉じこってばかりです。海にポッカリ浮かぶ孤島のように、たがいの島を行き来することは滅多にありません。そんな閉塞したムードを音楽療法士さんがどんどんブチ壊してくれればいいなあと思います。
音楽には内科も外科もありません。医師も患者もありません。だから音楽療法士は科の別なくどの病棟でも出入りすることができるし、院内・院外の別なく人間どうしをつなぐこともできると思います。私は故郷を20年以上も留守にしていましたので、地元に友だちはほとんどおりませんし、人脈もありません。幼なじみもほとんど東京に出てしまったし。だから、音楽療法士さんを通じてA主任や、KMさんと知り合うことができたのが何よりも一番嬉しかった。入院しながらにして院外の友人を作れるなんてことは滅多にできないことです。これも「音楽のちから」だと思います。





やぁ、どうも!