「音楽療法についていろいろお話を伺いたい」と主任看護師に懇願し、病棟までお越しいただいたのが音楽療法士さんと私の最初の出会いだったと記憶しています。
正直に申しあげると最初の印象は「堅い表情でニコリともせずノリの悪い面白みのない人。ほんとうに音楽が好きなのかな」でした。クリスマス会での印象とあまりにギャップがあり拍子抜けしたくらいです。
まずは音楽療法とはどんなものかとか、音楽のもつ不思議な力などとりとめない会話を続けたあと、これからどうしようかという話になり、私はてっきり「こうしてみませんか?」とかいろいろアイデアを出してくれるものと期待していましたが、「なにをしたいですか?」みたいなことを訊ねられたので、「ボサノヴァをやりたい」とお願いしてみました。そこで私のギター譜をコピーしていただき、毎週火曜日に二人でセッションをやることになりました。
麻酔科外来での音合わせの時も、30分過ぎたら「ハイおしまいー」みたいなあっけない終わり方だったので、「事務的に処理されてるのかな。まあ療法士さんにとっては大勢の患者のうちの一人にすぎないし」となかばあきらめ感がありました。イヤイヤやってくれているのなら、いっそご破算にしょうかとも思ったくらいです。
これは退院後にはじめて知ったのですが、私が白血病という重篤な患者ということで、音楽療法士さんもいったいどう扱っていいか苦慮されたというか、かなり気を遣ってくださったのだということ。他人と息をあわせる、とくに演奏を合わせるというのはスリリングで面白い反面、やはり病人にとっては体力面で厳しいものがあります。演奏中は自覚していなくとも、終わったあとグッタリすることがよくありました。だから今になって思うと時間制限をもうけたことはまことに道理だったわけです。
その後2回目のセッションを終え、次の曲を練習しているうちに症状が急変し、音合わせもいつのまにか無期延期となってしまいました。音楽療法士さんとお互い分かり合えるところまでいかないうちに立ち消えになってしまったことはその後もずっと私のなかで心残りとなり、それが数ヶ月後またちがう形でお願いする動機となったわけです。





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