自分情報としてのモノ
2年間ほったらかしにしていた自分の部屋も毎日コツコツと整理をかさねたおかげでだいぶ部屋らしくなってきた。
段ボール箱をあけるたびに懐かしいモノたちとの出会いがある。「自分にとって本当に大切なものは、いちど失うことでよくわかる」というけれど、今の自分にとってはどれもが愛おしい。この機会に思い切って棄てるものは棄てる覚悟でとりかかったのだが、ひたすら物品を愛でる時間に終わってしまった。レコード、カセット、書物、ノート、写真、手紙、オモチャ、工具、電子部品、画材、エロビデオ...それぞれの段ボールの数で自分の入れこみ具合がわかるのも面白い。
小川ライフテクノ研究所代表の小川俊一さんが『40歳・男の設計図 』という著書のなかで、自分の部屋にあるものを対象にメディア別リストを作成する箇所がある。
- 現物情報 イスタンブールのレストランから失敬してきた焼肉用の鉄串、ユングフラウ(スイス)から拾ってきた小石、亡父の遺品の古い置時計など
- 写真情報 何冊かのアルバム、カラースライド、8ミリのフィルムなど
- 音響情報 約20本のカセット・テープ(英会話練習の記録やゴルフコンペの録音)など
- 文字情報 約8000冊の図書、30冊のファイルブック、約500枚のカード類、約20枚の模造紙、名簿、辞典、日記
- 絵画情報 スケッチ、絵物語(子どもと一緒に画いたもの)、暗号ホログラフィー(情報分類用)、絵日記など
奥付には「昭和53年(1978)発行」とあるから、ちょうど30年前ということになるだろう。現在ではデジタル情報もリストに加わるはずである。8ミリのフィルムや暗号ホログラフィー(?)などは今でいうところのDVDやデータベースといったところか。
デジタルの危うさ
Apple(社名から"Computer"がとれましたね)の「iLife」などはこうした「家庭内情報」をターゲットにしている。「自分と家族の一生をフルデジタルで永久保存しよう」という魂胆であろう。たしかにアナログ情報には「劣化」という宿命がある。しかし、デジタルだからといって安心かといえば存外危ういものだということを今回いやというほど思い知らされた。
まずフロッピーやMOのたぐい。OSXで使えるUSBのフロッピーディスクドライブを買って試してみたが、2DDが読めない。それからワープロ専用機で独自フォーマットされたもの。ワープロ本体は故障して棄ててしまった。MOドライブはインターフェイスがSCSIIなのでそのままでは手持ちのPower Bookにつなげない(MOそのものも日本だけの規格)。メディアではないが手持ちのペンタブレットはシリアルポート接続のためこれまたお手上げだった。データ自体は読めても、ソフトがとっくの昔に開発中止して「開かずの間」になったファイルも一つや二つではない。国際規格といわれる画像形式や音声形式だって、いったいどの規格が30年後無事に生き残っているだろうか。Firewireもそろそろ危ないなあ。
原理的にほぼ経年劣化はありえないと謳われた「Compact Disc」も、記録面の酸化が確認されてレコードよりむしろ短命であることが判明した。「CD-R」は記録方式がただの色素なのでもっと弱い。MD、DATは絶滅するだろう。「DVD」はいうにおよばす、「Blue-Ray」もしれたものではない。コピーガード(CPRMなど)の仕様もまだ揺れている。「HD DVD」は早々に消えたしね。
日本の「規格マニア」ぶりは何も昨日今日はじまったものではない。ビデオならベータ、VHS、S-VHS、あと何だっけ、ソニーの小さいサイズ。レーザーディスクもある。これらの再生機が30年後も動くかどうかかなりあやしい。ビデオテープの「デジタル化」はカンタンにできるようになったけれども、フォーマットとメディアの争いまで見事に継承してしまった。
思い出工学
野島久雄先生が提唱している「思い出工学」でもデジタル・メディアの脆さを指摘している。
娘が結婚するとき、今私のパソコンの中にあるファイルをどう渡したらいいのだろうか。まさに「思い出の危機」である「思い出」というのは、昔懐かしの話だけではない。「個人に属し、個人が管理し、個人が楽しむ」情報のことで、あなたが保存しなければ誰も保存してくれない情報のことなのだ。
...これは記憶の継続性を考えずにハイテク機器を生みだしてきた工学の社会的責任でもある。
朝日新聞朝刊 2008.3.16『心体観測--人と物の心理学』
データ輪廻説
畢竟メディアというものはいわばデータの乗り物にすぎず、はなから「乗り棄て」される宿命を背負っているのではないか。つまりドライバーはギリシア神話に登場するシシュフォスのごとく、永遠にデータ移動もしくはコンバートという無意味な労働を続けなければならない。データ側からしてみれば、
「前世はカセットでしたが、今生は16bit 44.1kHzのCDです。来世はApple Loss Lessになりたいなあ。Windows Mediaだけはイヤです。サヨウナラ」みたいな。
デジタル・アナログともに極楽浄土にたどりつける日はやってくるのだろうか。阿弥陀如来はISOかそれともマイクロソフトか? それまでオレの部屋にあるデータはどんだけのメディアを乗り換えるのか?





わかるなー、メディア。
βのデッキがまだあってかろうじて動いてるようですが、これとていつ壊れるかわかりません。G4買ったときに手に入れた外付けFDドライブは、なんとOSXのサポートをしませんでしたよ、ロジテックなのに。ZIP100MBがたくさんあります。これは1Gのドライブが読み込みだけはしてくれるようでまだ大丈夫。230MBのMOは、SCSIボード経由でなんどかOS9で読めます。8mmビデオも1本だけあるんだけど、これはもう再生するものが無い。うーうー。
わしのFDドライブは「OSX対応・2DDも可」と箱に書いてたんですが...メーカーのFAQすら残ってません。
8インチのFDは1年もたなかったな。光学ディスク・磁気テープにもカビが...
湿気のない国がうらやましい。
今日はコンサートへは行けないのでカビの生えたOPUS AVANTRAのレコードを聴いてます。
十分に聴けます。
ゴルゴンゾーラみたいなもんですか。さすがイタリアン。
わたしは歴史資料学をちょっとカジッた者です。結局デジタルメディアは劣化するのでアテにならない、という研究結果がでていて、マイクロフィルム各社が積極的に営業をかけています。音源や映像も、カセットテープやビデオテープが一番耐久年数が長いようです。短期的にはデジタルメディアは手軽でよいんでしょうけれどね。ちょっと話がズレたかしら。
なるほどボイジャー1号2号に銅版製のレコードを積んだのは正解でしたね。