おやおや、せっかく助かったと思えば、ずいぶんくだらないことをしているな
「おまえは何者だ」
まあそういきりたつなよ。長い付き合いだ。おまえが知らなかっただけだ
「いったい何の用だ」
いや、ちょっとからかいにきただけだ。用はない。いまのところはね
「じゃあ速やかに立ち去ってもらいたい。おれは忙しい」
何が忙しいんだね。無職無収入で要介護3のパラサイトシングル君!
「退院したらやりたいと思っていたことをやっているだけだ」
そうか、お仲間がたくさん再入院しているからね。せいぜい楽しんでくれ。それにしてもおまえが後生大事にしているものはガラクタばかりだな。いまどきレコードだって?
「余計なお世話だ。おれはレコードが好きなのだ」
フッ出たね。お定まりの文句が。おまえの好きなものも、他人にとってはあってもなくてもどうでもいいものばかりだ。まったくおまえと同じだ
「どういう意味だ?」
おまえが死のうと生きようと他人にとってはどっちでもいいということさ。もちろんおれにとってもね
「誰にも必要とされなくてもいい。おれは生きるのだ。生きたいのだ」
みなそう言う。自分らしくだの生を全うするだの、くだらないことを聞かされていつもうんざりだ。おまえもありふれたつまらないやつらの一人だな
「なら今すぐ立ち去ればいいじゃないか」
言われなくてもそうするよ。ここは退屈だからな。おまえの担当だから仕方なく様子を見に来ただけだ
「おまえは死神か?」
死神はおまえ自身だ。おまえがおれをつくったのだからね。人間とはまったく変わった生き物だ。自分でつくった地獄に、自分で堕ちていくんだから。人間の数だけ地獄もある。だから安心しろよ、全室個室だぜ!





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