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1年ぶりのモス

「narajinさん、今日、娘がモスに寄ってくるけど、なんが食べね?」

「いやー、でもいまインシュリン入ってるがら。血糖値上がんねえべがー」

「たまにはいいんでねが。どうせ何食っても上がるんだはんで」

お向かいの患者さんのお誘いで一年以上ぶりにモスにありついた。いろいろ迷ったあげくオーダーしたのはテリヤキバーガー(モスはやっぱこれでしょ)オニポテセット。ドリンクは炭火アイスカフェラテ。袋から発する娑婆の匂いについガマンできず、到着と同時にがっついてしまいました。

久しぶりに食べてみて妙に感動したのは、袋とか包装紙とか、ドリンクの容器とかの外装部分。ファストフードって、こういう演出を含めて味わってたんだなあと思った。自分でも食いながらニコニコしているのがわかります。

「あら、narajinさん今日は食欲ないんだが」

昼の病院食にまったく手をつけず、そのまま下膳したら保険衛生士さんにしっかりチェックされてしまった。

「お向かいさんから差し入れもらってまって。ぜんぶ残してまったじゃ。ごめんごめん」

「たまにはそういうごともねばの! いいがらいいがら」

検温のときに看護師さんからも「今日は調子良さそうですね」と言われてしまった。端から見てもわかるくらい上機嫌なのだろうか。いくら感染のリスクを背負っているとはいっても、たまにはこうやってガス抜きしないとダメだなあと思った。

ウチの母はこういうところが妙に潔癖で、パンとかお弁当とか頼んでも「誰がさわっているか心配」などと言って買ってきてくれない。でも息子の上機嫌ぶりをみて考えをちょっと変えてくれたようです。

いつだったか朝日新聞で「ファストフード店を利用しますか?」というアンケート記事があった。その他の回答というのに「無性に食べたくなるときがある」というのがあった。同感である。「もっとヘルシーなメニューを」なんてバカいっちゃいけない。メガマックの人気ぶりを見よ。たまに思いっきりカラダに悪そうなものをガッツリ食べるからこそ粋なのだ。

仙台にいた頃のヨガの師匠が、「家では玄米食だが、外食のときはわざと体に悪そうなものを子供たちに食べさせている」と話していた。師匠はマクロビオティックにも造詣が深く、当時から料理教室などを企画していたのだが、一般に思われている「マクロビオティック=玄米菜食」というのは大きな誤解で、本来は「何を食べても平気な人間になる」というのが提唱者である桜沢如一(さくらざわ ゆきかず)の根本理念なのである。

桜沢はヘビースモーカーで、饅頭を日に何十個も食べたりと豪快な邪食ぶりであったと伝えられる。桜沢の一番弟子で、単身アメリカにわたり、ジョン・レノンらに影響をあたえたクシミチオにしたって、酒好き女好きで有名だ。彼らはいってみれば白楽天の子どもたちなのであり、自由人なのである。「遊ばざるもの食うべからず」と桜沢如一は自著に書き記している。彼が主催した塾の名前は「メゾン・イグノラムス(バカ庵)」。優等生や常識人はことごとく罵倒された。

食に口うるさい連中はたいてい人間的にもこじんまりした退屈なヒトが多い。彼らにこそ、たまにメガマックでも差し入れしたいものだ。

「何をする目的もなく、ただいたずらに健康を保つのは、骨折り損だ(フランスの金言)」

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