無菌室での闘病はたしかに辛かったけれど、他の人より軽く済んだところも多かった。なかでも最後まで感染をしなかったというのは大きい。
白血球がほとんどゼロという状態では、熱を出したら出しっぱなし、口内炎が出たら出っぱなしで、悪くはなっても良くなることはない。とくに小生のばあい、白血球がもともと少ないというハンデをかかえての移植であったので、他人より早くゼロまで落ち込む。先生もそれをいちばん心配してした。
ところがフタを開けてみると、なかなか感染しないのである。喉は炎症のせいかツバを飲み込めないほどの激痛におそわれたが、口腔内は放射線でドロドロに溶けていながらもほとんど痛まなかった。ふつうは顔が変形するほど腫れあがり、口を開けることもできなくなるそうだ。
体中にカビが生えたり、ヘルペスやサイトメガロウィルスが暴れ出すことも幸いなかった。なかには口腔内にまでカビが生える人もいるらしい。やはり「うがい」は大事だ。
結局のところ、感染しなかった勝因はなんだったのか。先生がいうには、「好中球が最後まで残るかたちで白血球が減少したのがよかった」とのことであった。精鋭部隊スノーマンが、死に際の最後の最後まで、わが身を護衛しつづけてくれたのである。
抗ガン剤や放射線によって、まるで背後から味方に撃たれるような惨い仕打ちを受けておきながら、自らの任務を全うして死んでいった彼らの英雄的最後に私は感動した。
退院したら庭に「スノーマンの碑」をこしらえ、毎年移植日を迎えるたびに彼らの魂を祀ってやりたいと思う。





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