私はかつて、無報酬で事務的な仕事を果たしてやったイスラエル人に、半ば冗談、半ば本気で、この仕事のお礼は、彼からではなく、イスラエルの神から払って頂くつもりだ、と言ったことがある。
すると、その神はすぐさま私の言質をとらえて、それからしばらくの間に、私の生涯で最もつらい苦痛や心の痛手を、ほとんどひっきりなしに、私に贈ってよこした。
そしてこれを書いている今も、私はその時の偉大な贈物を正しく評価し、それをよく利用しようと、心をくだいている。その贈物がなければ、この本も書かれなかったことであろう。
なぜなら、役に立つ著書と真の幸福とは、両方とも苦しい土台なしには得られないからである。不幸は、(逆説的に聞こえるかもしれないが)人生の幸福にぜひとも必要なものである。
ヒルティ『眠られぬ夜のために 第一部』p263 岩波文庫





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